パピー委託式|盲導犬パピー1回目の別れと出会い
公開日:
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D‐18胎ワトソン*ウェルシー仔
ワトソン*ウェルシー仔たちは、2月8日にパピーウォーカーさんに委託されました。
生まれたときは300g台~400g台だった子犬たちも、全頭5㎏を超えての委託になりました。
みんな立派に成長したね。
母子の別れと新たな出会い
私たちは大変なところは富士ハーネスのスタッフさんにお任せで、ウェルシーの頑張りとスタッフさんのお陰で、子犬たちはすくすく成長しました。
なので、お別れというほど大げさなものではないはずですが、それでも子犬たちがウェルシーと遊ぶ姿はもう見られないのだと思うと寂しさがありました。
自宅出産のボランティアさんは、私たち以上に寂しさがあるのでしょう。
最後の母子兄弟姉妹の時間
委託式に参加するため、富士ハーネスに行きました。
(委託は富士ハーネスと仙台訓練センターになりました)
車から降りたウェルシーは、ものすごい急ぎ足でこの前まで自分が子犬と一緒に生活していた子犬棟へと向かいます。
子犬棟の入り口でスタッフさんに
どうぞ。
といわれると、ウェルシーはリードを引きちぎりそうな勢いで、子犬たちのいる部屋へとダッシュしました。
子育て中のナチュレちゃんが、その勢いにびっくりして吠えました。
ナチュレちゃん、ごめんね。
子犬たちも
ママ~ママ~。
とピーピー言いながらフェンスの前に集まってきます。
子犬たちを外で遊ばせるので、ウェルシーもどうぞ。
とスタッフさんが言ってくださいました。
幼犬運動場にウェルシーが入ると、子犬たちが母犬を慕って追いかけてきます。
子犬たちがお乳を求めるので、ウェルシーは子犬たちを振り切っていました。
そして
あなたたちはこれを食べなさい。
ママのお乳はもうありません!
とでも言うように、子犬たちの前で吐きました。
それがこちらの動画です。
ウェルシーが吐いたシーンは、ちょうど遊具の陰になっていて映っていないので、ご安心してご覧ください。
吐き戻したフードを食べる子犬たちの姿は映っています。
野生の動物は離乳食などは作れないので、離乳期の幼獣に食べ物を吐き戻して与えます。
富士ハーネスで子育てをしていた頃のウェルシーも、母性から吐き戻して子犬たちに食べ物を与えようとしたそうです。
この「離乳食」は、ウェルシーから子犬たちへの最後のプレゼントになりました。
その後、念のため(子犬にお乳を吸われないように)ウェルシーはスタッフさんに服を着せてもらいました。
スタッフさんのご厚意でウェルシーと子犬たちは、最後の母子・兄弟姉妹の時間を満喫することができました。
この先、母子で無邪気に遊ぶ日が来ることは二度と無いのでしょう。
スタッフさんから母子への最後のプレゼントになりました。
いよいよパピーウォーカーさんのもとへ
委託式が始まりましたが、最初の時間は自己紹介から始まり、パピーの名前と個体(どの仔が来るか)の発表、生活の注意、質疑応答、契約書の取り交わしなどになります。
その間に私たちは、パピーウォーカーさんに手渡すため、1頭1頭の子犬の体をきれいに拭かせていただきました。
いよいよ、子犬たちをカートに入れて会場に運んでいきます。
会場の扉が開けられると、パピーウォーカーさんたちの歓声に包まれ、部屋の真ん中に子犬たちを乗せたカートが置かれます。
ウェルシーは子犬たちのいるカートの方へダッシュしようとしました。
しかし、私は力を込めてリードを固定しました。
ウェルシーはグイグイ引っ張ろうとしましたが、行くことができず私の顔を見ました。
私は微笑みながらウェルシーに
お別れだよ。
と言い、壁に備え付けられたフックにウェルシーを係留しました。
そして
パピーウォーカーさんへ1頭1頭パピーを手渡しました。
繁殖犬ボランティアの一番幸せな瞬間かもしれませんね。
ウェルシーは、子犬がパピーウォーカーさんのもとに行ってしまうと、諦めがついたのか?安心したのか?もう、子犬のそばに行こうとはしませんでした。
手渡した後、子犬を近づけてくださる人には子犬をペロッと舐めました。
まとめのようなもの
子犬たちは初めての別れを体験し、新しい家族との出会いの日を迎えました。
ウェルシーと子犬たちは、親子・兄弟姉妹で楽しい時間をたくさん過ごしました。
これから先は、人の社会で楽しく暮らしていくことを学んでいく時期になります。
寒い時期の委託になり、夜鳴きや夜間の排泄のお世話など、大変かと思いますが、子犬と一緒に楽しい時間をたくさん過ごしてほしいです。
子犬たちは6カ月にもなれば、体重も20㎏前後になり、見た目がおとなっぽくなります。
見た目の可愛い時期はあっという間です。
私は1頭目パピーのイズモのときは、あまり余裕が持てず気付いたら可愛い時期の写真があまりありませんでした。
写真や動画をたくさん撮ってくださいね。
素敵な思い出になります。
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Comment
ウェルシーっ子、無事にパピーウォーク出発、おめでとうございます♬
ウェルシーとご家族様は、本当にお疲れ様でした。
4頭のパピーを迎えた経験のあるウェルシーファミリー。今度はウェルシーのパピーちゃん達を送り出す、凄い経験。
パピーウォーカーの気持ち、繁殖ママ犬ボランティアの気持ち、両方の経験をされた方ならではのお気持ちを発信して下さるのは、本当に勉強になります。
ツムギ母さん
ありがとうございます。
ウェルシーも子犬たちも、体調を崩すことなく元気に委託の日を迎えられたのはスタッフさんのお陰です。
お仕事とはいえ、年末年始がありませんでしたからね~。
盲導犬育成にかかわるボランティアのお陰で、日頃なかなかできない体験ができたと思います。
ツムギとご家族の皆さんのように、犬も幸せになってほしいですし、犬を迎える人も幸せになってほしいです。
そして、盲導犬を必要とする人が、安全に歩ける社会であってほしいです。
ウェルシーちゃんが子供達の事を大切にしているか…
子供達がどれだけママの事大好きなのか…
本当に微笑ましくも、またこうして親子で一種に無邪気に過ごせる事がないのかも知れないと思うと、切なくもなりますね…
いつかまたパピーウォーカー復帰した際には、パピーをお迎えする裏でこうした別れがある事を、大好きなママや兄弟姉妹と引き離されて寂しい気持ちを抱えて、新しいお家に慣れよう、受け入れてもらおうとパピーなりに頑張っている事を決して忘れずに…
パピーをお預かりしたいと思います…
サナ父ちゃんさん
今ムービーメーカーを使って、子犬たちとウェルシーの動画や写真を整理しているのですが、ウェルシーは子犬たちの声が聞こえると不安そうになり子犬たちを探し回るんです。
普段は、子犬の気配が無いので子犬を探すそぶりは無いのですが、鳴き声に反応します。
なので、音を消して編集しています(笑)
まるでウェルシーが、パピーを入所させた後のパピーウォーカーみたいで、自分に重なり切なくなります。
取り残される母犬の心のリハビリには時間がかかるんですね。
これは初めて知りました。
犬は愛情深い生き物なのですね。
パピーウォーカーに限らず、子犬を家族に迎えるみなさんには
この子たちは幼くして母親と別れ、寂しさや不安を乗り越えて人の家庭で家族になろうと頑張っているんだな。
と思って育ててあげて欲しいなと思いました。