「愛情のバトン」盲導犬界の特殊な犬愛事情の心構え

公開日: : 盲導犬ボランティア

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盲導犬の育成にはとても多くの人の手がかかっています。

そこには、色々な人の色々な「犬への想い」があるので、Happyな場合もありますし「愛情のバトン」と言いつつバトンの担い手同士の間に溝ができることもあります。

盲導犬の育成には多くの人がかかわる

盲導犬の育成過程では、犬を協会で飼育するのは、ほぼ訓練犬だけです。

(他にも一部のPR犬、老犬などがいます)

子犬はパピーウォーカー。

子犬を産み育てる父犬母犬は繁殖犬飼育ボランティア。

盲導犬はユーザー。

盲導犬に向かないと判断された犬は、他の補助犬の道へ進んだり盲導犬のお仕事を紹介するPR犬になることもありますが、多くの犬は家庭犬としてキャリアチェンジボランティアの家庭に譲渡されます。

盲導犬を引退すると引退犬飼育ボランティアの家庭で余生を暮らすことになります。

その他に、犬を飼育している家庭に事情があるときなどに一時的に犬を預かるステイウォーカーというボランティアもいます。

1頭の犬に多くの人がかかわっていて、それぞれの人たちに深い犬への愛情があります。

愛情と執着は別物と心得よ

多くの「元親」の皆さんは、手離した「元うちの仔」の新しい家庭での様子を知りたいですよね?

できるなら、もう一度会いたいですよね?

新しいご家族と親しくなって、写真や動画をいただけたり、たまには会えたりしたらいいなあと思いますよね?

CC犬イズモ

それがうまくいっているケースもあります。

しかし、トラブルになってしまうケースもあります。

どうしたらうまくいくのでしょうか?

答えは、身も蓋もない言い方ですが

相手次第

です。

色々な考えの人がいるので、元親とは一切かかわり合いたくない人もいます。

その場合は、残念ながら諦めることになる確率が高いです。

相手の考え方を変えるというのは、正直難しいですよね。

元親がやってはいけないこと

せっかく繋がれても、元親がやると「ほぼ関係性を悪くすること」もあります。

それは

自分が注いできた愛情の形が「正」だと信じていて、新家庭のやり方を受け入れられず、自分のやり方を押し付けること。

簡単に言うと、口を出す、干渉する。

ですね。

もちろん元親に悪気なんて無いんです。

元うちのこを愛しているがゆえに、その仔にとって一番いい(と元親が信じている)対応をしてほしいと先方に要求してしまうのです。

元親にとっては、例え手離しても大切な「うちのこ」です。

それは当然の感情なのですが、その仔にとっては新しい家庭が「自分の家」なので、新しい家族と良い関係でいることが一番の幸せですよね。

自分のことを、パパ、ママ、お父さん、お母さんと呼び、犬に対してわが子同然の愛情を注いできたのであれば、その仔が次のステージに行ったとき

陰ながら応援する。

新しい家庭の接し方を尊重して見守る。

というのは、多分盲導犬界で求められる犬への愛情の形です。

別の家に行ったって、うちの仔であることに変わりはないのに…。

もう、自分は何もしてあげられないのか?

寂しすぎる…。

そう思っちゃいますよね?

分かります。

ですが、一般にそれを「執着」と言います。

愛情があるから執着もある。

そうですよね?

愛情が無いから執着もしないんだよね。

正しいです。

そして

愛情はあるけれど執着はしない。

この景色を見られる心を持てないと、盲導犬界の住民になるのは心が辛いように思います。

パピーの委託

盲導犬界では犬が手元にいる人がその犬の「保護者」になるわけで、当然「保護者」に権利があります。

そして「保護者」の考え方は自分と同じとは限りませんよね。

ここをわきまえないと要らぬトラブルの元になって、場合によっては協会や、ユーザー、他のボランティアに迷惑がかかることも実際にあります。

今やSNSの時代。

元うちのこの新しい家族のSNSを見つけてしまうこともありますよね。

連絡が取れないと思っていたけれど…。

あった~!

小躍りしたいような気持ちになりますよね。

そんな場合も落ち着いて、新家庭と良い関係を作っていけるように心がけていきたいです。

まとめのようなもの

盲導犬界では、ユーザー、ボランティア共に、犬との暮らしが一定の期間を過ぎると、可愛いうちの仔は別の家の仔になるのが「定め」です。

私は一応「元親」の立場なので、手を離れて行ったうちの仔にもう一度会いたい気持ちも分かります。

これが好きだったから使ってね。

とプレゼントを送ったり

こういう時はこうしてあげてね。

とプチ(いらん)アドバイスをしたくなる気持ちも分かります。

その一方で

あなたが愛情を注いで大切に育ててくださったことは理解しているし、感謝もしています。

でも、あの仔は今はうちのこです。

うちの家族と良い関係を作っていくことが何より大切なので、どうか(手も口も出さず)温かく見守ってください。

という新親の気持ちも分かります。

元親は新しい家族にとっては「義理親(人間の夫婦間の)」だと思うと関係性が「なるほど~」な感じですよね。

また、元親とは一切かかわり合いたくない人もいますが、それも尊重されるべきだと思っています。

関連記事→パピーウォーカーは辛い?子育てと毒親とパピーウォーカー

結論(個人的な感想です)

自分の役割は終わっている!

元うちの仔が幸せであればそれでいい♪

誰が見ても明らかに幸せでないと判ったら、協会に直談判して引き上げを要求しちゃうかも~。

(写真は、1.2枚目イズモ、3枚目ツムギです)

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Comment

  1. ケインママ より:

    「愛情はあるけれど執着はしない」って簡単ではないけれど大切なことですよね。
    私も繁殖犬飼育ボランティアの活動を通じて、他のことについてもそうありたいと考えるようになりました。

    • gd.vol より:

      ケインママさん
      私もこのボランティアを続けていて、愛情と執着は近くて遠いかなと考えるようになりました。
      愛情が強いからこそ、ずっと一緒にいたいし離れたくないし…なのですが、愛情は相手のため、執着は自分のため…なんですよね。
      自分の犬だったらワンセットでOKだけれど「愛情のバトン」ですからね。

  2. エスティ母さん より:

    色んな人がいますよねー、、
    私はとにかく人の名前も犬の名前も覚えるのが苦手で(。-∀-)
    付かず離れず…というか離れ気味のお付き合いになってます笑

    • gd.vol より:

      エスティ母さん
      お返事が遅くなりすみません。

      色々な人がいますね。
      考え方はそれぞれなので、何が正解というものではないのでしょう。
      私はお付き合いは新しいご家庭の考え方を尊重しています。
      なので、音信不通のご家庭あり、こまめに連絡を取り合うご家庭あり、という感じです。
      育てた犬が楽しく暮らしてくれることだけ祈ってます。

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